東京高等裁判所 昭和36年(ネ)2535号・昭36年(ネ)2483号 判決
本件記録によれば、原審裁判所は六回にわたり口頭弁論期日を開いたうえで口頭弁論を終結し判決したものであり、控訴人黄色合同株式会社、同堀井アサ子は第一回口頭弁論期日から、また控訴人山本織物株式会社は第三回口頭弁論期日から弁護士である訴訟代理人を依頼し、訴訟を追行しているのであるから、右訴訟代理人は前記のような主張立証をする機会を十分与えられていたのであり、これらの機会に提出することなく、当審における昭和三七年五月二八日午前九時三〇分の第三回口頭弁論期日に初めて、その主張をするにいたつたのであるから、それが時機に遅れて提出されたものであることは明らかである。
(二) 重大な過失
控訴人らが、右主張を前記口頭弁論期日まで提出しなかつたのは、原審における控訴人らの訴訟代理人において、右主張は、抵当権が実行され、競落が確定した後においては、これに牴触する前記主張ができない、と誤つて判断したからである、と述べるが、原本の存在及び成立に争のない甲第一号証によれば、被控訴人に対する本件土地の競落許可決定に対し、訴外沢田睦、沢田太白、沢田大成から、東京高等裁判所に対し、即時抗告を申立て、当審において提出したと同じ事由を主張して争つたが、昭和三五年四月八日決定により、右主張は排斥され、抗告が棄却されたものであることが明らかであつて、右裁判が抗告人の主張事実の存否、当該所有権の存否について、いわゆる既判力を有するものでないのみならず、右手続の当事者は本件訴訟の当事者と異るのであるから、本件訴訟において同じ主張を提出することが法律上妨げられると誤解するようなことはとうていありえないのであつて、それが許されないと誤つて判断したため前記口頭弁論期日までそれを提出しなかつたとしても、弁護士である訴訟代理人において重大過失がなかつたということはできず、むしろそのこと自体に重大な過失があるといわねばならない。
(三) (訴訟の完結の遅延)
控訴人ら代理人は、当審における昭和三七年五月二八日午前九時三〇分の(第三回)口頭弁論期日において、前記主張の陳述をしたものであり、昭和三七年七月一八日午後一時三〇分の(第四回)口頭弁論期日においてこれに対する被控訴人の答弁が行われており、同年八月二二日午後一時三〇分の(第五回)口頭弁論期日において、更に控訴人の補足的主張がなされた(これに対する被控訴人の反対主張の申出はない)のであるから、控訴人の前記主張の提出自体は、訴訟の完結を遅延させるものとはいえない。
したがつて、本主張の提出を時機に遅れた防禦方法として却下する理由は存在しない。
二、しかしながら、控訴人は、前記第五回口頭弁論期日にいたつて、乙第一ないし第四号証とともに即時に取調べることのできない証人多田公人、同王長徳の尋問を申出でたものであり、右証拠の申出は、前記主張を立証しようとするもので、前記主張に当然伴つてなさるべきものであるからら右主張と同じく、時機に遅れて提出し、提出しなかつたことに重大な過失があり、しかも、右証人を呼出し、尋問するためには、口頭弁論期日を続行し、新たに証拠調のための期日を開かねばならず、(更に場合によりこれに対する相手方の反証の申出も予想され、)それがために訴訟の完結が遅延することは明瞭であるといわねばならないから右証拠の申立は時機に遅くれた防禦方法として却下すべきである。
(牧野 満田 渡辺卓)